家に帰ってきました

というわけで、ようやく返事が書けそうです。

>gotanda6さん

はじめまして。思うにライターって、他の仕事にくらべリスクが少ないと思うんですよ。在庫があまるわけでもなし、仕事が没になったからといってマイナスになるわけではない。まあ、個人レベルなので、「なんだよ、電車賃が無駄になった」「資料として買った書籍代がもったいない」なんてことはありますが、基本的にその程度、と考えています。パン屋で大量のパンが売れ残って、明日には捨てなければいけないのとはわけが違う。で、リスクが少ないと、他の職業を兼任しながらでもできるかも、と考える人がでてくるのは当然の成り行きなわけで。タレントさんが自分で書くタレント本や蕎麦屋の主人が書く蕎麦本なんてのが発売されて、これがまた真に迫ったものだから売れてしまったりする。職業「ライター」は成立し辛くなっているのかなあ、とも思います。職業「ライター」の本分とはなにか、と考えた場合、よくわからない、というのが正直なところです。何かとのコンボ、つまり兼業で行ったほうが面白いコトが書けそう、という気が正直、します。

>shidaillさん

お疲れ様です。GDC飲み会を開くといって、僕がなにも起こさないまま時間が過ぎていきました。すみません。反省です。
さて……。

原稿料の話をしないのは、原稿の仕上がりクオリティを見て、原稿料を決めたいからだ」

それはいかがなものかと僕は思います。だって、「このスパゲッティはまずい! 10円!」というのと一緒でしょう。これがね、頻繁に「このカツ丼、マジうめ! おまえ、最高! 9800円!」という行為が繰り返されるなら、やる気になりますが、「仕上がりクオリティを見て」は結局、引き算の理由にしか使われないなら、それは「お客様、勝手は困りますよ」と店主の僕は思ってしまいます。軒先でメニューを見てお店に入ってきたわけですから、それなりの覚悟を頼む側のお客さんにはしてもらいたい。こちらも覚悟を決めて、値段付けをしますから。
たぶん、その編集長のお話を誰もが納得できるようになるとしたら、それは米国のようにチップがスタンダードになってからだと思います。ホテルでサービスがいいとチップを多めに払いますよね。前の晩のベッドメイキングが素晴らしいと、財布の紐が緩む。なおかつ、時間があるときは掃除のオバちゃんが来るのを待ってお礼を言いたくなる。もしくはチップと一緒にお礼のメモを残しておくようなことまでしてしまう。滞在が一週間を超えるときは、部屋のベッドメイキングひとつとってもストレスの原因になりますからね。仕事から疲れて戻ってきたとき、オバちゃんのちょっとした心遣いにホッとする瞬間が必ずあります。
原稿のクオリティが高い場合は惜しげもなく金を払ってくれる。それがスタンダードになるのでしたら、どんなライターでも、いくらでも良い原稿を書きますよ。当たり前の話ですけど、悪い原稿を書きたいと思っているライターなんてひとりもいません。

>yumikoさん

お疲れ様です。お仕事終わりましたでしょうか。僕はもう、ほんとに、あの……。気が遠くなるのを必死にとどめながら、一分いっぷんを過ごしております。

「好きな仕事ができればお金なんていらない」

確かにありますね。ただ、僕はその思いは企業に利用、搾取されていると考えています。お金なんていらない、と仕事をしても、結局はお金になるわけですから、どこかで誰かが儲けるために利用しているのは確実です。どんなにピュアとパッションを盛り込んで原稿を書いたとしても、出版社、取次ぎ、書店、読者にたどり着くころには、売り上げという数字に左右されるようになる。情熱はどこに行ってしまったのか。「いや、そんなことはない。熱意は伝わるはずだ」というライターの声もあるでしょうが、そういう人がどれだけ出版業界の仕組みに精通しているかは怪しいですね。自分の書いた原稿が読者に届くまで、どのような経路を辿るか。僕はそこに興味があります。物書きというあやふやなものではなく、今の立場を小売業として成立させたい。というわけで、「でるべん」に参加しているんです。yumikoさんも何度かお誘いしていますが、次回こそいかがですか(笑)。



ちなみに「でるべん」とは出版勉強会の略称でして、書店、出版、取次ぎの営業さんを中心に構成されている集まりです。ほぼ隔月で出版流通の勉強会を開き、各分野から主だった人に講師をしてもらっています。つい先日行われた「でるべん」はWeb現代編集長さんでした。その前は小学館の国際版権事業部の室長さん。僕が司会を務めさせていただきました。