日本に帰ってきました。そういや、なんでボルチモアに行っていたか書いていなかったような気がします。「オタコン2004」http://www.otakon.com/の取材です。オタクコンベンション、略してオタコン。日本のアニメ、ゲーム大好きっ子が集まって3日間、朝10時から深夜2、3時くらいまで騒ぎ倒すイベントです。
昼間は健全なコスプレイベントやディーラーズフロアが開催していますが、夜になるとHENTAIアニメが上映され一気にボルテージが上がります。中でも、パネルディスカッション「オルナタティブ オタク」はイっちゃってます。日本の同人サークルが描いた猟奇、陵辱系(女の子の手足を切断したり、肉体改造を施したような)イラストが次々と映し出される内容。パネラーが手足が切り取られた女の子のイラストを一枚いちまいジョークを交えて紹介し、会場が大笑いするという図。同行した男性が「この絵は日本人が描いたキャラクターだから受けている。つまり、描かれているキャラも日本人ということなんでしょ。日本の漫画やアニメも、この延長線上に捉えられているんでしょうねぇ」と漏らし、そのとおりだよなあ、と思っちゃいました。今まで意識しなかったナショナリズムが自分の中で起き出すのを感じましたよ。国辱じゃん、ねえ? まあ、会場全体がそういう雰囲気というとそうでもなくて、「オルナタティブ オタク」の会場にいた半数が途中、気持ち悪くなったのか席を立ったのは救いといえば救いでしょうか。
ただ、わかんないのは、こういう隠微な楽しみをパネルディスカッションまでして皆で共有したいという神経ですね。陵辱系や猟奇的なイラストに燃えてしまうどうしようもない人は日本にももちろんいるけれど、大概、限られた仲間内やひとりで楽しんでいると思うのよ。見知らぬ他人と喜びを共有しよう、理解してもらおうなんてこれっぽちも思わないし、そもそも考え付かないんじゃないか。それが後ろめたい行為だと皆がわかっているから、隠れて誰の迷惑にもならないように活動しているわけですよ。オタコンで見た米国人の底知れないポジティブさは何なんだろう。共有しちゃえば、後ろめたさもなくなると思っているんだろうか。
会場の外にまであふれ、観光都ボルチモアの港を肩で風切って歩くコスプレイヤー、オタクやらヤオイやら女子高生という日本語が書かれたTシャツを誇らしげに着る男女。彼らのポジティブさはホント、何なんだろう。ゲーム好き、アニメ好き、マンガ好き。なんとなく30歳を目前にして、そういったことが好きな自分をちょっと恥じりつつも、それを仕事としているんだから誇りに思わなくちゃ! と相反する感情のバランスをどうにか取っている僕には、底抜けに明るい彼らの気持ちはまったくわかりませんでした。カードキャプターさくらのネコ耳メイド服を着た190cm超の黒人お兄ちゃんや、鋼の錬金術師のコスプレをしたでっぷり太ったお姉ちゃん、お兄ちゃん……。彼らはなんであんなに明るいんだろう。同じオタクイベントなのに、なんでコミケはあんなに窮屈なんだろう。